[検出器ゲインの調整]ボタンをクリックすると、質量 #2 のターゲットアバンダンスが範囲内にあるかどうかがチェックされます。これが範囲内にある場合は、その極性のゲイン曲線は変更されません。ターゲットアバンダンスが低過ぎたり高過ぎたりすると、質量 #2 のターゲットアバンダンスを達成するために、検出器ゲインのキャリブレーションが実行されます。EM 電圧は、106 という倍率に設定されます。つまり、検出器の入力側に 1 個の電子が当たると、出力側で 106 個の電子が生成されます。この EM 電圧の設定が 2600 V を超えた場合、エレクトロンマルチプライア性能、機器の性能が低下したとみなされ、システムのメンテナンスをする必要があると警告が表示されます。
HED エレクトロンマルチプライアは、イオンの衝突によって生成される入力電流を受信し、その電流を増幅して、比例した出力電流を発生させます。
ゲイン = 出力電流 / 入力電流
ゲインのコントロールは、電子増倍管電圧 (EMV) によって行われます。EMV が高くなるほど、ゲインが高くなります。EMV とゲインは、対数線形の関係です。この直線関係は、一般的なすべての倍増管で共通です。直線の傾きは一定なため、調整が必要となるのは切片のみです。ゲインキャリブレーションルーチンでは、指定の機器の切片値のみを調整します。その後、機器固有のゲイン曲線係数が、LC/MS または CE/MS に保存されます。
ゲインの利用によって、機器間でメソッドを共有できます。原理上、2 台の異なる機器に同じゲインを使用すると同じシグナルレスポンスになるため、異なる機器間でのメソッド開発を簡単にします。EMV とゲインの関係は対数線形であるため、ゲインが 2.0 である場合には ゲイン 1.0 のアバンダンスの 2 倍になるはずです。
一般に、検出器は十分なアバンダンスを生成する最も低いゲインで動作させてください。ゲインが高いとシグナルは増大されますがノイズも増大し、多くの場合 S/N 比が低下します。ゲインを大きくすると EMV が増大して、エレクトロンマルチプライアの寿命が短くなります。ゲインをどれだけ高く設定しても、最大 EMV は 3000 V です。ゲインを 70 以上にすると、設定は 3000 V となります。
電子増倍管 (EM) は経年によって、徐々に効率が低下します。あるイオン電流入力値に対して生成される出力電流 (アバンダンス) が徐々に低くなります。電子増倍管 (EM) の経年によって低くなったアバンダンスは、イオン生成やイオン透過が良くない (イオン電流入力値が低い) ことによる低アバンダンスとの区別が容易ではありません。イオン生成やイオン透過が良くない場合には、電子増倍管 (EM) が以前のゲインで実際に正しく動作している場合でも、ゲインを増やす (それにより EMV が増える) ことにより補正したくなるかもしれません。ゲインを大きくすればアバンダンスは向上しますが、シグナル/ノイズ比(S/N 比)が低下するおそれがあり、エレクトロンマルチプライアの寿命が短くなります。
関連項目